7.2.2 フライト実験
7.2.2.1 試 料
カートリッジの形状、ゲルマニウム試料及びその封入に用いた石英管とも地上実験のものと同一ロットのものである。ただし、封入用キャップだけは手持ちが切れたため、異なるロットで直径が0.5[mm]ほど小さいものを使用している(実験への影響は無いとしてよい)。
なお、フライト試料は2本準備し1本はバックアップとし、打ち上げ前試料の最終点検装着時に試料(ゲルマニウム)の外観、及び接着剤の施工状態からより良好な1本を選定した。
また、7.2.1.4項(3)に示したとおり、地上実験時のベーキング温度(700℃)がやや高すぎる懸念があったため、フライト実験用試料は400℃でベーキングを行った。
7.2.2.2 実験装置
(1) 機能ブロック
TGFサブシステム、炉体部、試料部の外観をそれぞれ図7.2-11、図7.2-12、図7.2-13に示す。また、TGFの機能ブロックを図7.2-14に示す。電力の供給源は2台のバッテリであり計測制御装置は制御温度に基づいた電力の制御及びシーケンスに沿ったコンポーネントの制御を行っている。また、取得した実験データ(温度データ、電力データ)はテレメトリデータとして実験支援系に送られ、ロケット系を介してダウンリンクされる。なお、その場観察はCCDカメラにより行われ、画像はVTRテープに記録される。
(2) 配管系統
TGFの配管系統を図7.2-15に示す。炉体部の中には冷却室があり低温部を独立して冷却できるよう仕切られていている。真空排気する際には真空弁(VV61)と電磁弁(SV62)を開くことにより炉体部内が真空排気される。試料の冷却を開始する際は冷却室にHeガスを封入し(SV61開)、また、炉内全体を冷却する場合はSV61およびSV62をともに開にすることにより炉内全体にHeガスを封入する。
(3) 加熱室
TGFの加熱室は炉心管、ヒータ及びゴールドミラー管から構成されておりゴールドミラー管を通し、高温でのその場観察ができるようになっている。
ゴールドミラー管は石英管の表面に薄くゴールド(Au)をコーティングしたものでありゴールドの薄膜は光の赤外域は反射し、可視域は透過するという性質を利用して加熱と観察の双方を達成している。本実験では試料の温度が高く自ら発光するので照明を使用しなくても十分観察できた。
図7.2-11 TGFサブシステム外観
図7.2-12 炉体部外観
図7.2-13 試料部外観
図7.2-14 TGF機能ブロック
図7.2-15 TGF配管系統
7.2.2.3 実験条件
(1) 地上加熱
本実験では地上実験の結果から試料(ゲルマニウム)融解開始までに5分間を要することが分かり、また、微小重力での融解を行うため融解開始時刻を打ち上げ後70秒(X+70秒、おおよそ微小重力環境が達成される時点)に設定したので、打ち上げ前の230秒(X-230秒)から地上加熱するよう設定した。
また、打ち上げ前50分に真空排気装置は撤去されてしまうため、宇宙で真空排気を再開するまで炉内の真空を維持しなければならず、真空度劣化による昇温速度への影響が心配されたが、1gリファレンス実験及び打ち上げ前準備作業で真空が維持できることを十分確認してきており、当日は打ち上げ前(カウントダウン時)加熱開始から実験期間中、試料温度をモニタしTGF炉内真空度に異常がないことを確認した。
打ち上げ前に真空度が悪化することにより試料温度が予定通りに上昇しない場合は当日の打上げを中止することとしていたが、試料温度は予定通りに昇温し問題なく実験は行われた。
(2) 実験プロファイル
X-230秒でTGF実験準備信号を実験支援系から受けることによりTGFは加熱を開始する。その後、地上加熱を経て打ち上げられ、約X+70秒で融解が開始するよう計画した。また、X+190秒まで最大電力(400W)を投入し続け、その後、電力を3W/秒ずつ減少させることにより試料(ゲルマニウム)を融解凝固する。CCDカメラによる観察はX+65秒からX+451秒まで行われ融解凝固過程をVTRに収録する。
本実験の実験プロファイルを図7.2-16に示す。
図7.2-16 実験プロファイル
(3) 温度計測・制御
投入電力はヒーター近傍に装着した熱電対で計測した温度を制御温度としてファジー推論により制御する。本来TGFは高温室、低温室の両ヒーターを制御可能であるが、実験条件から高温室のみの制御とした。
また、試料温度(石英製カートリッジ側面温度)を熱電対により4点計測し、試料の温度分布及び試料の温度勾配を求めた。(図7.2-13参照)
7.2.2.4 打上げ前準備作業
TGFは打上げ前準備作業として次の項目を実施し、フライトできる状態であることを確認した。
(1)フライトテープ装着
(2)フライト試料点検及び装着
(3)漏洩試験
(4)ベーキング
(5)真空放置試験
(6)コネクタ固着
(7)バッテリ補充電
上記項目のうち(5)真空放置試験については、初め真空維持の条件(真空引き終了から110分の真空放置で真空度が10-2[Torr]台より高真空)が満足できず、リーク箇所をチェックした結果、試料装着部のフランジから非常に微量のリークが発見された。
当該部分は構造上、改修が困難であったのでシール用接着剤による真空シールの処置を施すこととし、最終的に真空維持の条件を満たすことができた。
その他の項目については準備作業を予定通り終了し、TGFは正常であることを確認した。
7.2.2.5 実験シーケンス
TGF2号機の実験シーケンスを図7.2-17に示す。
図7.2-17 実験シーケンス
7.3 実験結果
7.3.1 地上実験及び1gリファレンス実験
7.2.1.2 項に示した予備実験の結果、試料は融解量が外観で約20mm(試料中心部は約15mm)で一方向凝固できる(アンプルが割れない)見通しを得た。
1gリファレンス試験においてもカートリッジ及び封入石英管に破損はみられなかった。ゲルマニウム結晶は高温端の一部がカーボンシート側にはみ出し僅かに欠けていた。また壁面との接触によって多結晶化するだろうとの予想に反し単結晶になっていた。融解量は約15[mm]である。図7.3-1に縦割り断面を示す。下側に木の根状の構造が見られるが原因は不明である。また液面の縁の部分から多くの転位が導入されている。
図7.3-1 1gリファレンス試料縦割断面図で左側が種結晶側 重力は図中で下向き
また、実験装置は1gリファレンス試験でフライトシーケンスが正常に実行され、テレメトリデータ及びVTR画像ともに良好に取得できたことを確認した。
7.3.2 フライト実験
実験後の試料及びカートリッジの外観を図7.3-2に示す。カートリッジに異常は認められなかったが、内部のゲルマニウム封入管に試料高温端付近より斜めに亀裂が入っているのが認められた。石英管と試料ゲルマニウムの固着はなく、試料取り出しは容易であった。固化膨張にともなう内部からの融液の吹き出しは僅かしか認められなかったことから固化時の体積膨張の可能性も低い。まだ確実なことは言えないがこの割れは冷却時の石英とゲルマニウムの固着によるものではないかと思われる。また試料高温端で試料が一部欠けているのが発見された。これは上記の管の破損と同時に起こったと考えるのが妥当である。
成長と同時に撮影されたビデオ映像では界面の移動が明瞭にとらえられている。これは液体と固体で放射率が違うことに基づく。ただし成長の終期においては試料の温度が下がり、放射が少なくなるので界面は明確でない。
高温端の端部の形状はほぼ軸対称になっており、地上で試料管を縦に配置して行った場合の固化後の形状と類似している。一方成長部分の中間の部分では融液があたかも重力が働いたかのごとく片側に流れてきており非対称形状になっている。チェルノフ等の実験では成長部分は電球を細長くしたような軸対称の形状をしておりこの点で顕著な違いを示している。
この試料を図7.3-3のように切断し、成長方向の断面と成長方向に垂直な面で輪切りにした面の観察を行った。エッチング後の断面観察の結果(図7.3-4)から、試料は先端より約7[mm]が融解したことがわかった。これは地上実験時の融解量(15[mm])に比べて少ない。これは、ベーキング時の温度が地上実験に比べて低かったために、加熱時にガスが放出されこのガスによってヒーターから試料以外の部分に熱が逃げたと考えられる。加熱時のプロファイルを見ても立ち上がり時は地上実験に比べて温度の上がり方は速いが、700℃付近で逆転されていることから推察される。しかし、これ以外の理由として融液内での対流の停止のため地上に比べ熱が固液界面まで運ばれる速度が低下したことも一因と考えられる。
融解完了直後の界面形状は地上実験の時に比べて丸みをおびており、またより軸対称に近い。
図7.3-2 試料融解部分外観
図7.3-3 試料切断法
融解部分を完全に含むように先端を切り離し縦に二つに割る。一方を断面観察用にし、他方はさらに輪切りにして面内の転位を見る。この他に未融解部分を一部切り出した。 寸法でカッコ内は地上試料のもの。
図7.3-4 フライト実験試料縦割断面画面右側が種結晶側下が管に亀裂の入った側
7.3.3 転位密度分布
地上実験、フライト実験の双方について、未融解部分の一部(融解部分より約2[cm]離れた箇所)をとり、転位密度の評価を行ったところそれぞれ4×103[cm-2]、5×103[cm-2]で差はなく、またいずれの試料も面内の転位の分布はほぼ一様であった 一連の試料アンプル作製プロセスを行う前の転位密度を評価するため、試料棒を切り出した残りの材料の転位密度を調べたところ5×102[cm-2]台であり加熱融解によってやや転位は増えていることがわかる。
それぞれの試料を高温端から2mm毎に輪切りにし、各切片の中心付近における転位密度を調べた。結果を図7.3-5に示す。いずれの試料も成長部分の転位密度は種結晶に比べて増加している。また、1gリファレンス実験と比較してフライト実験試料の方が全体に転位密度が高めである。いずれの試料についても成長の終期において周囲に比べ転位が減少している部分がみられた。これが急速成長の効果によるものかについては更に詳しい検討が必要である。
図7.3-5 フライト実験、地上実験各試料の転位密度分布試料中心付近での平均値。エラーバーは標本の最大と最小を示す。
7.3.4 考 察
今回の実験の目的の一つは、チェルノフ等の用いた燃焼加熱のかわりにより穏やかでかつ制御された加熱方法として熱容量の少ないゴールドミラーを用いた抵抗加熱を用いることである。制御装置(電力アンプ)の能力不足から思ったほどの加熱が得られず、本フライト実験ではたかだか7mmしか融解しなかったことは残念であったが、この加熱方法によって引き起こされる熱歪のために導入される種側の転位は、燃焼加熱に比べ圧倒的に少なく後者が105~106[cm-2]であったと報告されているのに比し、本実験では融解したところから種側に2cm入ったところで103[cm-2]台と低い値であった。このことから抵抗加熱を採用した意味は大きかったと考えられる。
実験の次の目的は、融解、成長過程において固液界面が移動する様子を直接テレビカメラでモニターし、成長速度を決定できるかどうかを調べる点であった。融解長が当初の予定よりはるかに短かったため、固液界面がカメラの視野のごくはじの方にしか存在せず多少見えにくい点もあったが、融解及び成長の様子をその場でみることができ、融解・成長速度がともに6mm/分であることが測定された。
種結晶と成長結晶の界面はエッチング法により明瞭に観察できる黷Iに図7.3-6に示すが、この界面は地上成長と微小重力下の成長では大きく異なる。地上結晶では界面はほぼ平面状であるが、管壁に接する部分は種側に大きく下回っている。一方、微小重力下での結晶の界面は、結晶の長手方向の中心平面に対しほぼ円筒対称となっており液側に大きく凸となっている。この形状は計算機シミュレーションで得られた形状に良く一致しており、現在詳しい比較を行っている。
次の問題はフライト実験においてみられた融液と石英ガラスとの固着である。ビデオでもはっきり観察されたが、融解時ゲルマニウム結晶全体が高温部に引きずられ移動する現象がみられた。フライト実験の結晶をみると融解部はアンプル管と同じ形状をしており、これは融解時に融液がアンプル管全体にわたり密着していたことを示す。地上実験でのたて型炉における成長実験では凝固終了後の形状が上に凸になっており、これはゲルマニウム融液と石英が”ぬれ”ていないことを示している。従って本来的には濡れ性の悪いものがフライト実験においては濡れていたことを示す。もう一点気がついたことは、アンプル管内でクッション材として用いたカーボンシートがゲルマニウム融液に強く固着し、成長結晶から容易にはとれない程付着していた点である。カーボンは、もともとゲルマニウムとは濡れ性が悪く、それ故地上でのボート材としても用いられている。しかし、今回カーボンシートがゲルマニウムに強く付着していることから何らかの原因があり、これが同様にゲルマニウムと石英管との固着をもたらしたものと考えられる。
この原因については推測の域をでないが、カーボンシートに吸着されていた微量の水分ではないかと考えられる。これについては追加実験を必要とするが、ゲルマニウムが水分により酸化され石英管と固着した可能性がある。地上でフライト実験と同じアンプル管により成長された場合には、融液は重力によって下に押しつけられているので試料は移動が困難であり、フライト実験のように管内壁全体に密着するようにはならなかった。このためこの固着という問題は地上でははっきりとはみられず、フライト実験において初めて見いだされたといえる。いずれにしてもこの固着現象を解明することが今後の課題である。
図7.3-6 固液界面形状
今回の実験では以上述べた固着という現象のため、急速成長による転位の劇的な低減化はみられなかったが、結果として次のようなことがいえる。
(1)フライト実験試料、地上実験試料とも成長部分は種結晶に比べ2桁近く転位が増加し105[cm-2]の程度であった。転位の発生についてみると、壁面からの転位の導入がより多いが内部でも増えている。成長開始時の界面は融液側に凸であるが成長が進むにつれ凹に転じた痕跡もあり界面形状の影響もあると思われる。融解しなかった部分でも転位が増殖し成長界面近くでは転位密度は105[cm-2]台にあった。フライト試料で低温側で外周だけが融解した部分では転位は更に多く、この転位が未融解部分にまで入り込んでいる様子が明瞭に観察された。
フライト試料、地上試料ともに主に壁面から多くの転位が導入されているが両者の間には若干の差がある。フライト試料では前述の管に亀裂の入った側で転位密度が非常に高く、106台後半から107[cm-2]台に達している。しかしこの部分を除いては壁面からの転位の導入はあるものの地上試料に比べて少なく、特に亀裂と反対の面では管との接触があったにも関わらず、転位の導入はほとんどない。一方、地上成長試料では融液の自由表面部からの転位導入はほとんどないが、壁面と接触した部分からは相当転位が入っており特に融液表面の縁の部分からは107[cm-2]台の転位が入っている。フライト実験試料にもこのような縁はあり転位の導入もあるが、少ない。
(2)フライト実験試料において融液が片側に寄り非対称形状を示し、チェルノフ等の実験と大きく異なっている。これは、断面すべてにわたって溶解した部分では見られず、外周のみ溶解した部分でだけ見られた。この原因は融液と石英管の固着にあり、結晶が融液に引き込まれたあと固化する時に片寄りが発生したものと考えられる。
(3)石英とゲルマニウムは本来濡れ性は悪いが、既に述べたゲルマニウムと石英の固着現象のため融液が石英管の内壁いっぱいに広がり温度降下時熱膨張差により石英管に亀裂を残し結晶に転位の導入を招いたものと考えられる。
(4)真空弁、気泡注入装置等の作動に伴い発生するg-ジッタが結晶成長に及ぼす影響について考える。融体中に流れを引き起こすのは低い周波数のg-ジッタである。上記のg-ジッタは比較的高い周波数であり、結晶成長に及ぼす影響は高次の効果であると考えられる。今回の実験結果から見る限りg-ジッタが結晶成長に及ぼした影響は明確ではなく、今回の実験計画ではその影響を無視できると思われる。
7.3.5 実験装置フライト結果
7.3.5.1 フライト結果
本項では実験装置からみた実験結果として「実験シーケンス」と「温度プロファイル及び電力プロファイル」をまとめて示す。実験装置の機能としては正常に作動し良好な結果を得ることができた。
(1) 実験シーケンス
実験中に発生したイベントを表7.3-1に示す。
各イベントは計画通り発生していており実験装置はフライト中正常に作動したことが確認できた。
(2) 温度プロファイル及び電力プロファイル
加熱開始(打ち上げ前230秒)から実験終了までのプロファイルを1gリファレンス時のプロファイルと比較をして示す。
A.試料温度プロファイル
試料カートリッジに固定した熱電対温度プロファイルを図7.3-7に示す。[試料温度1(高温側)と試料温度4(低温側)を示す](カートリッジの温度測定位置は図7.2-13参照)どちらの温度もフライトデータと1gリファレンスのデータは良く合っている。ただし、試料温度1はX-230秒(加熱開始)からX-130秒付近までフライトデータが1gリファレンスデータよりも上回っていて、逆にX-30秒からX+80秒までは若干フライト時の温度の方が1gリファレンス時の温度よりも下回っている。
フライト時と1gリファレンス時で試料温度1が変化したのは、これまでのデータから見て、炉内の真空度が変化したためと考えられる。真空度が変化する要因としては、環境の違い(振動荷重の有無)、コンフM戟[シ唐痰iMGESへの組込み状態と、装置単位との違い)、試料部の違い(ベーキング温度の違い)が考えられるが次の理由により試料部(ベーキング温度)の違いによる影響が最も大きかったと考えられる。
a.炉体部単体で加熱状態(真空状態)で振動試験を実施しており、このとき真空度の悪化はみられなかったので打ち上げ時の振動荷重で真空度が悪化した可能性は小さい。
b.真空維持の状態はMGESに搭載されている時とTGF単体の時でTGFから考えると同じコンフィギュレーションであり、打ち上げ時のコンフィギュレーションが真空度を悪化させる要因とは考えられない。
c.1gリファレンス用試料のベーキングは700℃、2時間で実施したがフライト用試料は400℃、4時間で実施した。このためフライト時は400℃以上に加熱された時点でアウトスが発生したものと考えられる(図7.3-7の現象と合致)また、加熱初期時に真空度が良かった原因は打上げ前の真空維持時間が短かったため
(1g時2時間に対してフライト時は約46分)と考えられる。
上記考察の結果、アウトガスが試料温度1のプロファイルに影響を与えたものであると推定できる。試料温度4にも同様の理由により若干温度差があったものと考えられる。また、X+80秒以降で試料温度1及び試料温度4の温度はほぼ1gレファレンス時に漸近し、試料温度1の最高到達温度はフライト時が1047.4[℃]、1g時が1047.2[℃]であった。
B.試料温度平均温度勾配プロファイル
試料温度1と試料温度4の間の平均温度勾配を図7.3-8に示す。温度勾配は試料温度1と試料温度4間の平均値を表している。温度勾配についてもフライト時と1gリファレンス時は良く合致している(最大差3℃/cm)。
C.ヒータ温度プロファイル
高温室ヒータ近傍に装着した熱電対温度(ヒータ温度1)及び低温室ヒータ近傍に装着した熱電対温度(ヒータ温度2)のプロファイルを図7.3-9に示す。ヒータ温度もカートリッジ温度と同様に炉内真空度の影響を受け、フライトデータと1gリファレンスデータとで若干温度差がみられた(ヒータ温度1は最大26℃、ヒータ温度2は最大10℃)。ヒータ温度1及びヒータ温度2はヒータの近傍(真空中)の温度を計測しているため真空度が悪化すると回りの高温部(ヒータ等)からアウトガスによる熱伝導で熱が入り温度が上昇するものと考えられる。従って真空度が悪化したフライト時の方が高目に出ている。
D.投入電力プロファイル
高温室ヒータに投入された電力プロファイルを図7.3-10に示す。投入電力はフライト時と1gリファレンス時で一致している。
本実験では低温室ヒータに電力は投入していない。
表7.3-1 TFGシーケンス
No.
シーケンス項目
期待値
測定値
判定
備考
1
実験準備コマンドON
X-230.0付近
X-230. 0
OK
No.1は手動による操作
No.2, No.3,No.6はBUSからのコマンドをTGFが認識した時刻である。
それぞれについてBUSがコマンドを出した時刻は、X+60.1,X+65.1,X+80.1であり、いずれも0.1秒遅れ(正常)であるTGFはNo.3の実験準備信号をトリガーに作動開始する。
No.4,No.5(CCD/VTR ON)は、No.3実験準備0Nから0.8秒の遅れである(正常(*1))。以降のTGFの各イベントも0.8秒遅れで発生している。
(*1)
ソフトウエア上、TGFはNo.3の実験準備0N(X+65.2)を受け即座に作動開始しようとするがフィルタリング、及ひモード遷移の関係で0.2~1.2秒遅れるのが正常である。
2
実験準備コマンド OFF
X+60.2
X+60.2
OK
3
実験準備コマンド ON
X+65.2
X+65.2
OK
4
CCDカメラ ON
X+65.4±
X+66.0
OK
5
VTR ON
X+65.4±
X+66.0
OK
6
実験開始コマンドON
X+80.2
X+80.2
OK
7
SV63 開
X+80.4±
X+81.0
OK
8
真空弁アンサ 開
X+80.4±
X+81.0
OK
9
SV63 閉
X+83.4±
X+84.O
OK
10
音声イネーフル ON
X+1OO.4±
X+101.0
OK
11
SV61 開
X+250.4±
X+251.0
OK
12
SV61 閉
X+255.4±
X+256.0
OK
13
SV64 開
X+4OO.4±
X+401.0
OK
14
真空弁アンサ 閉
X+400.4±
X+401.0
OK
15
SV64 閉
X4O3.4±
X+404.0
OK
16
実験準備コマンド OFF
X+441.4±
X+442.0
OK
17
実験開始コマンド OFF
X+441.4±
X+442.O
OK
18
CCDカメラ OFF
X+451.4±
+452.0
OK
19
VTR OFF
X+451.4±
X+452.0
OK
20
音声イネーブル OFF
X+451.4±
X+452.0
OK
21
TGF OFF
X+530.4±
X+531.0
OK
図7.3-7 試料温度プロファイル
図7.3-8 試料温度勾配プロファイル
図7.3-9 ヒータ温度プロファイル
図7.3-10 投入電力プロファイル
(3) 画像データ
VTRに記録した画像データは正常であり、以下に示す項目を確認することができた。
・試料の融解凝固過程を観察でき固液界面の移動速度を確認できた。
凝固時の固液界面の移動速度を表7.3-2に示す。
・試料全体の観察により実験中に試料が5回若干量動く(未融解部分が融液中に引き込まれる)という予想外の挙動を観察できた。
試料未融解部分が引き込まれた時刻
X+140秒
X+165秒
X+172秒
X+180秒
X+190秒
表7.3-3に示すように、この挙動はフライト中に発生したg-ジッタとは特に関係がないと考えられる。
・光学部(レンズ)は焦点、露出とも良好であった。(打ち上げ時の振動によるずれはなかった)
・時刻認識用の音声(1kHz)信号は予定通り記録されていた。
得られた画像データ例を図7.3-11に示す。
表7.3-2 固液界面移動速度
時刻[秒](*)
固液界面移動速度
X+240(凝固開始)
—–
X+240~X+265
約6[mm/分]
X+265~X+295
約6[mm/分]
X+295~X+325
約6[mm/分]
(*)打ち上げ時刻がX+0
表7.3-3 g-ジッタの発生
時間
X+(SEC)
振幅(P-P) (mg)
イベント
備考
X軸
Y軸
Z軸
64.0
4.8
4.8
1.5
1段モニタ分離
64.5
3.0
ISPレンジ切り替え
70.3
0.9
1.1
2.2
71.4
3.8
6.3
6.3
RCS作動
73.4
0.6
0.9
2.4
BDH M2 モータ停止(74.1)
75.2
4.1
2.2
6.3
BUS VV01(真空弁)開
78.2
0.2
0.1
0.3
79.5
3.4
6.0
3.3
BDH M2モータFWD
80.7
0.5
1.0
0.9
[HTF VALVE ON(80.1)]
μ-g 実験開始
80.9
6.2
6.3
5.5
TGF VV61(真空弁)開
83.9
0.2
0.2
TGF SV-63閉(84.0)
92.3
0.5
0.5
1.8
BDH M2モータFWD
93.5
0.3
BDH M2モータSTOP(93.4)
150.3
0.5
0.6
1.8
BDH M2モータ
152.8
0.1
0.1
0.4
BDH M2モータSTOP(152.8)
166.2
0.4
0.7
1.7
BDH M2モータFWD
169.3
0.2
0.4
1.3
BDH M2モータFWD
169.6
0.5
BDH M2モータFWD
178.6
0.4
0.3
0.3
185.2
0.4
0.6
1.7
BDH M2モータFWD
186.6
0.3
BDH M2モータSTOP(186.4)
194.9
0.4
0.3
0.3
221.4
0.4
0.3
0.4
236.4
0.2
243.2
0.6
0.6
1.9
BDH M2モータFWD
245.5
0.4
0.3
0.4
BDH M2モータSTOP(245.7)
245.8
0.4
250.9
0.3
0.3
TGF SV61閉(251.0)
251.2
0.4
0.6
1.7
BDH M2モータFWD
254.3
0.2
0.4
1.3
BDH M2モータFWD
254.6
0.4
BDH M2モータFWD
255.9
0.1
0.2
TGF SV61閉(256.0)
269.2
0.4
0.3
0.4
270.2
0.4
0.6
1.7
BDH M2モータFWD
271.5
0.1
0.3
BDH M2モータSTOP(271.4)
284.9
0.1
0.3
0.4
291.4
0.4
0.3
0.4
319.3
0.4
0.3
0.4
328.2
0.6
0.7
2.0
BDH M2モータFWD
330.8
0.4
BDH M2モータSTOP
334.4
0.3
0.4
339.3
0.1
0.3
344.2
0.5
0.6
1.7
BDH M2モータFWD
347.2
0.5
0.5
1.3
BDH M2モータFWD
347.6
0.4
BDH M2モータSTOP
363.2
0.5
0.6
1.7
BDH M2モータFWD
366.2
0.2
0.4
1.3
BDH M2モータFWD
366.6
0.4
BDH M2モータFWD
372.9
0.4
0.3
0.3
382.2
0.4
0.6
1.7
BDH M2モータFWD
383.4
0.3
BDH M2モータFWD
400.8
6.2
6.3
6.0
TGF VV61(真空弁)閉
TGF SV64開(401.0)
403.9
0.2
0.2
TGF SV64(404.0)
406.6
0.4
0.4
0.4
437.8
0.4
0.3
0.4
439.2
0.3
0.5
1.5
BDH M2モータFWD
439.9
0.7
0.8
2.1
BDH M2モータSTOP
図7.3-11 画像データ
7.3.5.2 フライト後点検結果
2号機フライト後に実施したTGF分解点検結果を表7.3-4に示す。また、結果概要を以下に示す。
(1) サブシステムとしての確認
実施した項目は次のとおりである。
・外観目視検査
・導通絶縁検査
・フライトシーケンス試験
結 果
異常無し。
(2) コンポーネントとしての確認
実施したコンポーネントはつぎのとおりである。
・炉体部組立
・真空弁
・電磁弁
・バッテリ
・CCDカメラ/VTR(*)
・計測制御装置(*)
(*)CCDカメラ/VTR、計測制御装置はサブシステム試験で確認した。
結 果
異常無し。
ただし、バッテリの内部結線チェックの際にバッテリの電圧が規定値を下回っていた。(その後の充放電試験の結果、機能に異常の無いことが確認された。)
表7.3-4 フライト後点検結果
点検項目
内容
規格
結果
サブシステム
(1)外観目視検査
温度勾配型加熱装置の外観を目視にて検査し異常の無いことを確認する。
異常の無いこと
良
(2)ハーネスの導通絶縁検査
TGCハーネスの導通絶縁測定を行う
異常の無いこと
良
ヒータ及び熱電対の導通絶縁抵抗を測定する
異常の無いこと
良
(3)フライトシーケンス試験
電力分配を行い、電源供給ラインに規定の電圧がかかることを確認する
規定の電圧がかかること
良
非加熱状態でフライトシーケンス試験を行う
シーケンスが正常に流れ、VTRテープに画像・音声が正常に記録されていること
良
(4)真空排気試験
真空排気を行い、炉体部及び配管に漏洩が無いことを確認する
規定の真空度に到達すること
良
各コンポーネント
(1)炉体部組立
単体で外観を目視検査する
異常の無いこと
良
各サブ組立に分解し、外観を目視検査する
異常の無いこと
良
(2)計測制御装置
単体で外観を目視検査する
異常の無いこと
良
(3)真空弁
外部漏洩、内部漏洩検査を実施する
漏洩量が規定値内に入っていること
良
(4)電磁弁
外部漏洩、内部漏洩試験を実施する
漏洩量が規定値内に入っていること
良
(5)バッテリ
単体で外観を目視検査する
異常の無いこと
良
内部結線を導通絶縁検査により確認する
異常の無いこと
(注)
(注)制御装置の漏れ電流により、バッテリが定格容量以上に消費されていた。
その後の処置により、バッテリに問題がないことを確認した。
7.3.6 共通実験支援技術
TGFの開発項目と習得した共通実験支援技術を以下に示す。
(1) 開発項目
a.炉体部
以下のアイテムを開発することにより、ゴールドミラー管を用いた温度勾配炉の採用が可能となり、高温状態の試料を直接観察することができた。
・観察性、耐振性を考慮したヒータの開発
・耐振性、耐真空性、耐熱性を考慮したゴールドミラー管の開発
b.計測制御装置
小型軽量化及び制御ソフトウェアの開発により実験条件を満足することができた。
c.試料部
耐環境性を有し、温度計測要求を満足した石英ガラス性カートリッジの開発、及び温度勾配を考慮した試料部組立を開発することにより実験要求を満足できた。
d.観察系
ゴールドミラー管を通して、試料の融解凝固過程を直接観察記録することができた。
(2) 共通実験支援技術の習得
A.温度測定及び温度制御技術
a.熱電対による石英製カートリッジ温度の計測
試料カートリッジの温度計測方法に対して、次の条件を考慮して、測定方法を確立した。
[条件]
・真空環境であり、高真空を保たなければならない。(使用材料の脱ガス制限)
・打上げ時の荷重がかかる。(熱電対の固定方法に対する強度要求)
・計測の対象がガラスである。(透過性物質)
確立した項目は次のとおりであり、上記課題を全てクリアし、再現性のある石英製カートリッジ温度を計測する技術を習得することができた。
・真空環境、振動環境、高温環境に耐える接着剤の選定。
・熱電対先端位置を固定するためにカートリッジ表面に、ガラス性の“ポケット”を加工。
・接着剤の量をコントロールすることにより、良好な温度の再現性を達成。
b.温度制御技術
ゴールドミラー管を用いた加熱炉は、観察ができるといった大きなメリットがあるが、熱的な効率からみると金属加熱炉には劣る。このデメリットをおぎなうために次の工夫を行うことにより、熱的改善を試み、半導体の融液成長実験という高温実験に適する装置とした。
・ゴールドミラー管の金コーティングの厚さを調整することにより、管の反射率を上げ、熱的性能を向上させた。
・ゴールドミラー管の端からの熱の逃げを防ぐ構造とした。
B.その場観察技術
炉体部にゴールドミラー管を採用することにより、試料の融解、凝固過程を直接観察することができた。
ゴールドミラー管の金コーティングの厚さは観察性を左右し、コーティングが薄いほど観察性は良好となるが、加熱性能が低下する。
TGFの開発では、観察要求及び加熱性能の双方を満足するようにコーティング厚さを調整する方法を確立できた。
C.高温処理技術
a.真空中で高温に耐えるゴールドミラー管の開発
TGFのゴールドミラー管は高温での使用と強度を考慮して、石英ガラスに金コーティングを施している。石英ガラスへの金コーティングは他に例がなかったが、コーティング工程を確立することにより、高温環境、振動環境で安定して使用できるゴールドミラー管を開発することができた。
b.高温での耐振性のある石英ガラス性カートリッジの開発
2号機実験では地上加熱を実施するため、高温(約900℃)での振動に耐えるカートリッジを開発する必要があり、寸法(管厚等)、形状(管と管との接合方法)、支持方法を工夫することで要求を満足することができた。
c.実験条件を満足した温度制御の達成
ダミーの試料(Si3N4)を用いて次の性能を達成できた。
・温度勾配 38.5[℃/cm]以上
・温度変動度 ±1.4[℃]以下(at 1000℃)
また、実試料を用いた時は、高温側にカーボンロッドを装着するなどの工夫を行い、一時的に約60[℃/cm]程度の温度勾配を実現し、実験条件を満足することができた。
d.ヒータ温度を用いたファジー制御
TGF2号機では、ヒータ温度の制御にファジー制御方式を採用した。
(2号機実験では低温側ヒータは使用しないため、1chのみ加熱制御)
ファジー制御方式は、非線形なプロファイルを作るのが容易であり、本実験では電力を非線形に制御することを考えて採用し、予想通りの成果が得られた。
以下にファジー制御方式の特性をPID制御と模式的に比較した図を示す。
図7.3-12 ファジー制御の特性
D.材料と容器の適合性評価技術
本実験では融解時にゲルマニウム結晶全体が、高温部に引きずられる現象がみられた。これは、融解時に融液がアンプル管全体に渡り密着し、試料の表面張力により未融解部分が引きずられたものと考えられる。本来、ゲルマニウムと石英ガラスはぬれ性が悪いことが知られており、1gリファレンス実験等、地上実験ではぬれ性が悪いことを示す結果を得ていたので原因は特定できないが、アンプル内にゲルマニウムと一緒に封入したカーボンクロスが何らかの悪い影響を与えた可能性が推定される。
今回の結果を教訓に、今後、サンプルの封入に当っては、次の点に留意していく。
a.材料を容器に装着する時には装着の条件を十分検討する。
(材料の洗浄、ベーキング等の処理条件)
b.材料と容器とは何らかの方法により、固定することを第一に考える。
E.微小重力の擾乱による影響評価技術
図7.3-13に示すNASA文献をもとに半導体成長実験に対する加速度の影響を調 査した。実験中にTGFで発生するg-ジッタは真空弁及び電磁弁の開閉に伴うものであり、大きさが最大数10[mG]、周波数が260[Hz]付近であることを試験で確認した。従って、本g-ジッタは図7.3-13を考慮すると、本実験にほとんど影響を与えないことがわかった。
図7.3-13 g-ジッタの実験に対する影響
7.3.7 実験装置
実験装置は本実験を実施する上で滞りなく機能した。ただし、打上げ前の地上加熱を行う上で、炉内の真空維持について議論があったので、背景と真空維持の必要性を以下に示す。
背景
小型ロケットの実験では、実験時間は6分間と短いため、今回の実験ではどうしても地上の予備加熱が必要となった。
一方、TR-IAの打ち上げスケジュール上、真空排気は打ち上げ前約50分前に停止される。従って、今回の実験では真空排気停止から予備加熱開始までの間、炉内の真空度が維持され、加熱プロファイルが計画通り再現できるかどうかがミッション達成上大きな課題となった。
真空維持の必要性
TGF炉体部は機能上試料温度は高温(約1000℃)に加熱され、その他の温度(例えばゴールドミラーの温度)は比較的低温(500℃以下)に保たれる。そのため真空断熱が破れると高温である試料の熱が低温側に熱伝導により奪われてしまい、試料の温度が上がらず、融解できないことになてしまう。
図7.3-14に真空度と平均熱伝導率との関係を示す。本関係は多層断熱での値であるがTGF炉体部でも同程度の関係であるものと考えられる。従って、本関係から真空断熱を確保するための真空度は、おおよそ10-2[Torr]より高真空である必要があると言える。
図7.3-14 真空度と平均熱伝導率との関係
今後の課題
炉内真空度を維持する上で、今後の対策としては次のものが考えられる。
a.真空シールとしては、形状、スペースが許す限り、軸シールは避け、フランジ・シールとすることが好ましい。
b.より安定した運用のためには真空排気装置を準備することが好ましいが、排気装置の準備については、実験を含めて、効果的な方法あるいはシステムを検討する必要がある。
7.4 結 論
7.4.1 実験結果のまとめ
実験結果と考察をまとめると次のとおりになる。
(1) 加熱歪の低減ができ、種部での転位を103[cm-2]台に抑えることができた。
(2) 微小重力下での急速成長において単結晶成長に成功した。
(3) 固液界面の移動速度を直接テレビカメラにより測定することができた。
(4) 固液界面の形状はシミュレーションと良い一致を示した。
(5) ゲルマニウム融液と石英管が固着する現象がみられた。この結果、アンプル管が破損し、転位の導入がみられた。
(6) 融解長は予想よりかなり短く、より急速な加熱が望まれる。
また、技術的にはほぼ計画していた実験支援技術を習得することができた。
7.4.2 実験成果と意義
急速融液成長は微小重力下で融液が容器に接しないことを利用したもので、微小重力利用材料研究の一つの分野を形成する重要な技術である。類似のものとして落下塔を用いた合金金属液体球の急冷凝固の研究がある。この実験では無容器の場合に得られる大きな過冷却を利用し、急速に固化することにより新しい合金相の出現を研究する。この場合は種結晶を用いていないので成長した固体は一般に多結晶である。一方、本実験では固体の一部を残して固化するので、未融解部分を種結晶として用いることができ、単結晶成長を行うことができる。
本実験で得られた成果は7.4.1項にまとめた通りであるが、これらの結果には次の意義がある。本実験は既に述べたとおり、微小重力下での半導体の急速成長に関する研究の歴史においては、旧ソ連のチェルノフ等の研究に次いで、二番目のものである。この歴史的背景から本実験の意義を考える必要がある。
先ず、急速融解成長に関する加熱方法であるが、チェルノフ等が燃焼加熱を採用しているのに対して、本実験では電気抵抗加熱を採用した。燃焼加熱は急速加熱が可能な点、利点も大きいが、燃焼の制御が困難であるので、加熱冷却の温度プログラムをあらかじめ設定することができない。さらに、あまりに急速な加熱冷却であるため、熱歪により結晶内にかえって欠陥を導入する危険性もある。又、加熱冷却の再現性に関しても問題がある。その点抵抗加熱は温度制御性、再現性は比較にならない程優れているが、加熱の急速性については劣る。そこで、本実験ではゴールドミラー炉を用い、炉の熱容量を著しく小さくするとともに、最大限の電流を流すことにより急速加熱を試みた。フライト実験によると、融解長は7mmと地上実験に比べ、約1/2程度であったが、一応融解と固化が行われており、電気炉により急速融解・成長を行うことができた。これ以上の融解長を得るには制御装置の能力を向上させることが必要である。このようにして電気炉の採用により制御された急速加熱と冷却が可能になった。
種部の転位密度を調べてみると、チェルノフ等が加熱後105~106[cm-2]に転位密度が増加したと報告しているのに対し、本実験の場合加熱後の転位密度は103[cm-2]の程度であり、燃焼加熱の場合のような大幅な増加はない。このことは抵抗炉の採用のためと考えられる。
成長速度はテレビカメラによりその場で測定することができた。これは今迄できなかったことであるが、ゴールドミラー管の採用により、初めて可能となった。これにより測定した融解速度、成長速度ともに約6mm/minであり、通常の融液成長速度に比べ約50倍の速さである。このような急速成長においても単結晶成長が行われており、急速成長における単結晶成長という第一の目的を達成することができた点で、本実験の意味は大きい。
成長軸を含む断面を結晶カッターにより切り出し、研磨後エッチングを行って、融解部と未融解部の境界を決定した。それによると、その境界は融解側に対して凸形となっており、計算機シミュレーションの結果と定性的に非常に良い一致を示した。微小重力下では熱対流が停止するので、理想的な状態で結晶成長を行うことができる。従って、その様子を計算機シミュレーションと比較し、それがどの程度実験を説明できるかを見ることにより、融液成長のメカニズムに関する情報が得られる。それによると、計算機シミュレーションは固液界面の形状はじめ多くの点で実験をかなり良く説明しており、今後試料の抵抗分布等が明かとなれば、より詳しい比較が可能になるものと考えられる。
一方、予想とは異なる実験結果も得られた。それはGe融液と石英アンプル管の固着の問題である。7.2.1項において述べたように石英管にはGe融液は“ぬれ”ないはずである。しかるに縦断面形状を見ると、融液は管壁に密着しており、固着があったものと考えられる。これを裏付けるものとして、Ge棒が融液側に引き込まれる現象がテレビにより明瞭に観察されている。この引き込みはフライト実験中でのgジッターによる可能性も当初考えられたが、両者の時間対応が全くないことから、この可能性は否定された。現在の所、この原因は完全には明かではないが、アンプル管内のクッション材として用いたカーボンシートからの微量水分が原因でGe融液と石英管が固着した可能性が高い。いずれにしても地上では重力により融液が管壁に押し付けられているため移動できず、顕著な固着現象は観察されていないが、微小重力下では融解しつつある試料は容易に移動できるため固着現象が顕著に現れたものと考えられる。この固着現象のため、結晶成長時結晶に大きな歪が加わり、目的の一つであった低転位結晶の成長には成功しなかった。しかし、このような新しい知見が得られたので、アンプル管の内部構造を変えることにより固着現象を回避することが可能と考えられる。
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